{希哲館事業}{二十ヶ月計画}{時記}{公開}(4)

{二十ヶ月計画の始動 K#F85E/369F-A372}

ここのところ,考え込むことが多い。最近の世界情勢を眺めていると,希哲館事業に関して重大な決断を迫られているようだ。

私が希哲館事業を始めることになった大きなきっかけの一つに,15年前のアメリカ同時多発テロ事件があった。それ以前から世界思想対立は私の中で漠然としつつも大きな課題であり,子供のころから人が対立に至る過程をよく観察していたように思う。あの事件は,そんな私の問題意識に強い確信を抱かせた。

それから,宗教対立を含む思想対立を解決するために,何か世界が共有出来る一つの価値観が必要だと考えるようになった。最終的に私はそれを「希哲」と表現するようになった。古代ギリシャに端を発する「フィロソフィア」の訳語であり,その影響をもれなく受けた現代世界に通底する文化を指し示す言葉だ。我々は,その源泉に立ち返り,その力を蘇えらせる必要がある。その運動はまさしく現代における世界規模でのルネサンス累新)であり,その中心となる機関として希哲館を構想した。

開始から10年近く経ったが,私はこの希哲館事業にありとあらゆる夢と知恵を詰め込んだ。新しい人間像,新しい世界像,新しい学問,新しい技術,新しい経済,そして新しい文明……考えられることは全て考えた。いかなるものにも従属せず,一人,世界の全てに正対する。相対主義を越え,超人をも越えて,まだ見ぬ凡人を求め行くその精神を私は「希求主義」と呼んだ。

そしていま,現代世界を支えてきた価値観が大きく揺らいでいる。資本主義はいよいよ行き詰まり,知的権威は失墜し,多くの人が世界の語り方を見失っている。

希哲館事業という形で,いまの世界が抱える問題への網羅的な解答を準備してきた私にとって,これは千載一遇の好機だ。サッカーでいえば,ゴール前の絶妙な位置に走り込んだところに,ちょうどボールが飛んでくるという場面だ。ただ,本物のサッカーと違って,こういう機会は何度も得られるものではない。十年に一回あるなら良い方,千年に一回もあるかどうか,初めての環境で初めての挑戦だ。だから正直に言って,自信の持ちようもない。

そんな微妙に憂鬱な気分で最近考え始めたのが「二十ヶ月計画」だ。今年3月から,希哲館創立11周年直前となる来年10月までの20ヶ月間で日本極大国ハイパーパワー)に成長させる計画だ。つまり,日本はアメリカ合衆国をはるかに凌ぐ国となる。一見,とんでもない目標に対して期間が短過ぎるように思えるが,青写真と技術はすでに10年かけて用意してきたものなので,あとは仕上げの問題だ。これが希哲館事業の試金石となるだろう。