Xanadu
希哲館が提唱・推進する日本の産業政策に「ジパング計画」がある。その最大の特徴は,人工知能や仮想通貨といった“流行”ではなく,「知能増幅」(IA: intelligence amplification)を中心に据えている点にある。
その目標は,知能増幅技術による知識産業革命を起こし,いわゆる GAFAM を大きく凌ぐ日本企業を創出,日本を世界史上最大の極大国に導くことだ。この日本を模体として,自由と知が共存する新しい国際秩序を創っていく。
この構想を可能にしたのは,言うまでもなく「世界初の実用的な知能増幅技術」であるデライト(デルン)だった。デライトは,いわゆるメモサービスから知能増幅サービス(知能増幅メモサービス)への発展が可能であることを理論化・実証した世界初の例でもある。
知能増幅という概念は昔からあるものだが,人工知能に比べ話題性に乏しかった理由は,実用化の目処が全く立っていないことにあった。例えば,脳にチップを埋め込むとか,遺伝子を弄るとか,現実には多くの人に受け入れられそうにない空想的な構想がほとんどだった。それを容易に触れられるものにした,という点に知能増幅技術としてのデライトの革新性がある。
昔,テッド・ネルソンという人が始めた「ザナドゥ計画」というものがある。世界で初めて「ハイパーテキスト」という概念を提示し,いま我々が使っているワールド ワイド ウェブの原型となった構想だ。
勘報機における情報の概念に革新をもたらそうとしながら頓挫した例として,ビル・ゲイツが提唱していた WinFS とともに私がよく挙げていたのがこのザナドゥ計画だった。デライトは,その志を継ぐものでもあった。
「ザナドゥ」というのは,本来はモンゴル帝国の上都のことだ。マルコ・ポーロが『東方見聞録』で広めてから,ヨーロッパでは「東洋の理想郷」に近い意味を持つようになった。
同じ『東方見聞録』に由来するのが,日本人にはお馴染みの「黄金の国ジパング」だ。当時の日本と思われる国が,金をよく産出するきらびやかな島国として伝えられた。これが「ジャパン」など外国語で日本を指す言葉の由来だとされている。
残念ながら,今の日本は知識産業で出遅れ,アメリカとの差は開く一方,中国にも追い抜かれ,“衰退途上”と言われる状況にある。
そんな日本を,古の伝説をなぞるように,「知の黄金郷」にしてみせようではないか。「ジパング計画」とは,日本の歴史と勘報の歴史の交差点に付けられた名前なのだ。