「ディストリビューション」,より正確には「ソフトウェア ディストリビューション」(software distribution)という英語は,想品(ソフトウェア)をまとめて一個の配布物にしたものを指す。特に,「Linux ディストリビューション」という形で使われることが多く,Linux 用者はこの言葉を多用する。
多用することもあって,「ディストリビューション」という11文字のカタカナ語は流石に煩わしい。そこで,日本語では俗に「ディストリ」(ディストロ)とか「トリ」(鳥)などと略されている。いずれにせよ,正式には通用しないので,まともな訳語を考えてみたい。
はじめに思いついたのは,「取り分」(とりぶん)だった。これは原語の音声的特徴をよく掴めている。原語では配分,分配といった意味が元なので,意味も近い。ただ,「取り分」では限られたものの分け前,という意味合いが強く,想品のそれには相応しくない。想品配布の特徴である複製とは反対の語感を与えてしまう。
そこで,字を換えて「採り分」とする。これは悪くない。「採」は「とる」と読める字の中でも,特に「選びとる」という意味を持つ。想品を採集・採択してまとめたものという意味と,用者にとっては採用選択肢の一つであるという意味が同時に表現出来ている。
私は15年ほど前からの Linux 用者であり,その「Linux 採り分」の開発者でもあるが,これなら作る立場からも違和感なく使えそうだ。