ごうひん【剛品】ハードウェア(hardware)の希哲館訳語。⇔柔品(ソフトウェア)
一昨日書いた『最新の希哲館訳語事情』という文章の中で,希哲館独自の翻訳技法を紹介したが,この技法には限界がある。潜在的な翻訳可能性を最大限に引き出すための技法であるため,ある外来語があらゆる面から見て完璧な訳語を潜在的にも有していない場合には無益な井戸掘りになる。
理想的な訳語を探している間,その外来語はカタカナで使うしかない。その一つの例として,「ハードウェア・ソフトウェア訳語問題」というのがあった。
私は昔からプログラムやプログラミングを「論組」(ろんぐみ)と訳しており,その連想で早期からソフトウェアに「想品」という訳語を当てていた。ところが,ソフトウェアを意訳したばかりに,これに釣り合うハードウェアの訳語は一向に見つからなかった。これでは流石に使いにくい。
最近,この問題を解決するために「そこそこの訳語」を導入して,暫定的に利用するということを考えた。それが「剛品」と「柔品」だ。「硬品」や「軟品」という案も考えたが,触感的な語感があるため,抽象性を重視して剛品・柔品の組み合せを採用した。例えば,フワフワしていたりグニャグニャしているハードウェアを硬品と表現したくなかった。
最初は妥協案として考えた剛品・柔品だが,「柔よく剛を制す」の精神を柔道に昇華させた日本文化を考えれば,「ソフトウェアが世界を飲み込む」と言われるこれからの時代を日本語で上手く表現した奥深い訳語のような気がしてきた。
ソフトウェア開発というのは言ってみれば「知の柔道」なのかもしれない。