マルタ共和国(─きょうわこく)は,南ヨーロッパの国家である。イギリス連邦。
英語が公用語であるため,英語学校が多く英会話留学先としても近年注目を集めている。
私には,いつも「鈴木さん」と呼んでいる,鈴木仁大という友人がいる。希哲館事業にとっても重要な人物であり,彼について書くことで私自身と事業の性格も整理出来そうな気がしたため,試みに簡単な「友人伝」を記しておく。
鈴木さんと出会う少し前から話を始めよう。
私は17歳で「輪郭法」と呼ぶ理論を発明し,これが情報技術,引いては世界経済の大革新につながりうることを発見した。そして,これを核に世界のあり様を大きく変える事業を構想し始めた。これが他でもない,希哲館事業のことだ。
閃きの瞬間こそ天にも昇るような快感を得た私だったが,やがてその重圧と困難に気持ちが押し潰されるようになった。しばらく葛藤の時代を過ごし,気付くと19歳になっていた。
当時の私は,希哲館事業を成功させることが自分に出来るのか,出来ないのか,それだけに頭が支配されていた。金も名誉もどうでもよく,他人への尊敬も憧れも全て失った。心の中にあったのは,ただ希哲館事業を成功させた自分という輝かしい理想と地を這うような現実だけだった。それ以外のことは全てどうでもよくなってしまった。
自分はこのままずっと手が届く気もしない理想に支配されて悶えながら生きるのか……こうして病んでいった私は,20歳を前にして自殺を考えるようになった。これには流石に周囲も黙っておらず,あっちこっち,気持ちを変えられそうな場所に無理矢理連れ出してくれた。
そうして連れ行かれた場所の一つに,鈴木さんがいた。