発明の祖母

描主宇田川浩行K#F85E
上描き希哲13年(2019年)
07月14日 23:33
下描き希哲13年(2019年)
07月11日 23:42
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

私がデルン実用化成功してから,気付けばもう7年も経つ。

デルン(deln)とは,ここ四半世紀大きな変化が無いウィキブログに代わる CMS の形態として私が独自に研究開発してきたものだ。その特徴は,輪郭法(delinography)という理論を応用して,膨大な情報輪郭を掴み,あらゆる種類の情報を縦横無尽に結び付けられることにある。人間の情報処理能力を飛躍的に向上させ,社会全体の知的生産性を高め,無知に基く不和を解決するための技術だ。

情報技術(IT)の歴史において,「情報の垣根を無くす」ということは,常に最大の課題であったと言える。この観点から,私はデルンをよくザナドゥ計画WinFS と比較している。

ザナドゥ計画は,情報技術の先駆的な理論家テッド・ネルソン氏が1960年に始めた世界初のハイパーテキスト開発計画で,現在の WWW に大きな影響を与えたものの,本来の計画は事実上失敗した。50年以上経ってからウェブ上で動作する OpenXanadu として公開されたが,まだ実用的とは言い難い状態にある。

WinFS は,Windows の次世代ファイルシステムとして,マイクロソフトビル・ゲイツ氏自身が開発を指導したが,これも理想通りにはいかず,2006年には中止された。これもやはり,取り扱い上の制約が多いファイルを縦横無尽に交換検索・利用出来るようにしようとした試みで,私はこの種の技術をハイパーメディアにちなんで「ハイパーファイル」と呼んでいる。

デルンは,このハイパーメディアハイパーテキスト)とハイパーファイルを統合した「シンメディア」(symmedia)という位置付けになる。CMS を足がかりとして,将来的にはファイルシステムに統合することを見据え,部分的な実験にも成功している。デルンもまだ十分とは言い難いものの,少なくとも実用化に成功し,開発が軌道に乗っているという意味では,ザナドゥ計画と WinFS を凌いだと自負している。

しかしながら,この事実は,私自身にとっても奇妙に思えた。普通に考えれば,この分野では有数の研究者であるネルソン氏,言わずと知れた20世紀最大の柔品(ソフトウェア)企業であるマイクロソフトと長年世界一の富豪だったゲイツ氏に出来なくて,私に出来るわけがない。7年前の私は,論組プログラミング)の勉強を本格的に始めてからわずか6年ほどの,技術者としては素人に毛が生えたようなものだった。

規模の差こそあれ,これらに類似した技術も無かったわけではない。ただ,全てに共通して,なぜか開発が盛り上がらない。人間の知的な能力を人工知能等に頼らず向上させる,一種の「知能増幅」技術であり,重要性は明らかだ。それにもかかわらず,世間はそれほど関心を抱いていないように見える。私にはこれが不思議だった。

そんなことばかり考えていた時,ふと気付いたことがある。ネルソン氏もゲイツ氏も,この技術開発に成功する前に地位を確立した人だ。彼らにとって,この技術は「あったらいいもの」でしかない。私はどうかといえば,17歳の頃にデルンに関する閃きを得てから,デルンを中心に希哲館事業を開拓しようとしてきた。この種の技術は「なくてはならないもの」だった。もし彼らに出来なくて私に出来た理由があるなら,これしか考えられない。

そしてこの種の技術一般の開発が続かない理由は,簡単に言えば需要が無いからだ。考えてみると,よく指摘される現状の WWWファイルシステムの不完全性は,ほとんどの人にとってどうでもいいことだ。そもそも多くの人は,ザナドゥ計画や WinFS が必要なほど複雑で多量の情報を扱っていない。この種の技術を切実に必要としているのはごく一部だ。苦労して開発したところで,商業的価値は高が知れている。

必要は発明の母」というように,私にとっての切実な必要がデルンを生み出したのは間違いない。しかし,その必要は何から生まれたのかといえば,私の世界観から生まれたものだ。これはいわば「必要の母」であり「発明の祖母」だ。

デルンの普及を推進しようとすれば,やはり多くの人にその必要性を認識してもらわなくてはならない。その必要を生み出す世界観をいかに共有してもらえるかが重要になってくるのだろう。

一覧

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以前,「完全に合法的に人間の走る速度を100倍に出来る技術」が開発されたら,社会はそれを受け入れるか,という思考実験をした。交通システムは?防犯は?競技は?恐らく色んなところに歪みが出て,社会は混乱に陥いる。デルンもそれを考えておく必要がある。

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