「松本人志問題」について考える

描主宇田川浩行K#F85E
上描き希哲13年(2019年)
06月03日 22:25
下描き希哲13年(2019年)
06月03日 22:22
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

川崎殺傷事件を受けて松本人志さんが「凶悪犯罪者は人として不良品」という趣旨の発言をしたことが物議を醸している。複雑な問題なので,この発言の是非についてはまた別の機会に論じるが,近年,どうもテレビ業界は松本さんの扱い方を間違えている気がしてならない。これを仮に「松本人志問題」と呼んでおく。

はじめに断わっておくと,私は松本人志さんのことは好きだし,多少影響も受けている。「松本人志を面白いと思ったことがない」という人もいるが,それは良い悪いではなく大衆と笑いの感覚がずれているだけだと思う。氏に苦言を呈する人間には,昔の松本さんに影響を受けたからこそ今の松本さんに違和感を覚える人が少なくない。

私もその一人で,「昔の松本さんは間違いなく面白かったが今の松本さんは間違いなく面白くない」と思っている。ここを誤解されると話がおかしくなってくる。

ここ数年,テレビに出ている松本さんが特別面白いことを言っているのを見たことがない。若手・中堅芸人に混じっていても昔のような圧倒的な存在感は無いと思う。松本人志が言うことだから面白いはずだ,と雰囲気に飲まれてしまう人や,そもそも若い頃の氏を知らず,普通のちょっと面白いテレビタレントだと思って見ている若者は多いかもしれないし,もちろん特別面白くないわけでもない。だからタレントとして切り捨てにくいのだろう。

なぜ時事問題から笑いの話になるのかというと,私はお笑い芸人の失言は大抵の場合「面白くない」ことに原因があると思っている。芸人が言うことなのだから常識外れでいいじゃないか,とも思えないくらい芸が無い発言が炎上していることが多い。松本さんも例外ではない。一世を風靡したお笑い芸人としてコメントを求められているのだから,ダラダラ面白くも深くも鋭くもない発言を垂れ流して「炎上」している松本さんを見たくない,という昔からのファンだって多いはずだ。

松本さんは基本的に「良い人」なのだと思う。後輩に優しかったり,若手ばりの体を張ったこともやるし,人間として尊敬出来るところもある。ただ一つだけ芸人として良くないと思うのは,「潔さ」が無いところだ。明らかに失敗した映画監督にしても,負けを認めず中途半端なままだし,明らかに面白いことが言えなくなっても「笑いの貯金」で食いつないでいる。

ダウンタウンには勝てない」と言って漫才を引退し,不祥事できっぱり芸能界を引退した島田紳助さんと親しい付き合いをしていて何故その潔さを学ばなかったのか不思議なくらいだ。何より,若い頃の松本さんなら,今の松本さんを見て絶対に私と同じことを言っていたと思う。

そんなことを考え過ぎて,最近,もしかして松本さんは,かつて『ごっつええ感じ』でよくやっていたような「痛いおっさん」をあえて演じているのではないかと思うことすらある。松本さんほどの人が,ただ衰えただけでああいう状態になるとは考えにくいし,笑いが一周回ってつまらなく見えるのだとしたら少し救いがある。

出力論組プログラム虎哲*イチ 1.01
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