今月19日,私は『ポケモン GO』の流行についての所感を書いた(『ポケモン GO』の大流行と評価)。この時,任天堂をはじめとするポケモン関連株は暴騰の状態にあったのだが,近年稀にみる流行としては評価するものの持続性に疑問符が付くこと,実質的にナイアンティック中心の開発であることを指摘し,「過剰な期待はしないが面白い試み」と締めくくった。
22日,任天堂が「業績に与える影響は限定的」と発表したことで株価は暴落した。当然といえば当然のことだが,一部で「いまごろ開発元が任天堂ではないことに気付いたのか」などと投資家たちが馬鹿にされている。確かに,集団としての投資家を一つの人格としてみると,あまり賢くは見えない。ただ,こういう場合,中心にいるのは「上がりそうだ」と思って株を買う人々だ。多くの人が上がりそうだと思っていれば上がるのが株なので,今回の一件では相当上手く儲けた投資家もそれなりにいるだろう。任天堂の発表を潮時と見て利益確定売りに群がったのはむしろ投資家たちの狡猾さというべきだ。
もちろん,その周縁には実際に情報分析が足りていない投資家たちが多くいる。というのも,情報分析に時間をかけることと流れに一早く乗ることは両立しないからだ。考えるより先に手を出すことが利益に繋がることは多い。さらに,多くの投資家は株式市場全体の動きを「広く浅く」眺めているので,個々の材料について情報を追うのにも限度がある。こうした,個別の材料については愚かに振る舞う投資家たちの群れがあり,さらには企業の将来性を好意的に評価して資金を投じてくれる良心的な投資家たちも巻き込まれることで株の動きが極端になるわけだ。
いずれにせよ,『ポケモン GO』の流行そのものは任天堂にとって決して悪いことではない。同作によって起こったゲーム環境の変化を取り逃しさえしなければ,これを好機として出来ることは色々あるはずなので,やはり過剰な期待はしないまでも今後の任天堂の動向は注目に値するだろう。